MEMO05
2000年度夏学期(3年次)
比較社会論演習
E. H. Carr, Nationalism and After Chapter 1(邦訳:大窪愿二訳『ナショナリズムの発展』第1章) 報告
The Third Period (20世紀初頭,原著17ページ〜26ページ)
【キーワード】 ナショナリズムの破局的成長とインターナショナリズムの破産(catastorophic growth of nationalism and bunkruptcy of internationalism),国家の社会化(socicalization of the nation),社会主義の国民化(nationalization of socialism),経済ナショナリズム(economic nationalism),ナショナリズムの地理的拡大(geographical extension of nationalism)
・ 民族国家の性格に変化……ナショナリズムの 局的成長とインターナショナリズムの破産→ナショナリズムが新しい政治的,経済的環境のもとに活動し始めたことがその根底にある
(1)新しい社会層(new social strata)が国家の成員の中に導入された
(2)経済権力と政治権力の目に見える形での結合
(3)国家(nation)の数の増加
・ 国家の民主化(democratization)→国家の社会化(socicalization)
・ 支配権を握った中間階級による政治的権利の主張→大衆の経済的要求の全面的押し出し(経済ナショナリズムと大いなる関連)
・ 国家の社会化は労働者に国家の政策と権力に対する強い関心を抱かせ,その当然の帰結として社会主義を国民的なものにする(nationalization of socialism)
・ ナショナリズムと社会主義の同盟の近代的始祖……ビスマルク
・ 国際社会主義(international socialism)→一国社会主義(socialism in one country)
・ 国家は中間階級(middle class)の所有物→「労働者の国家」
・ 社会ナショナリズムの基盤としての政治→経済……国際経済秩序の破棄
・ レッセ・フェーレ国家(laissez-faire state)・夜警国家(night-watchman state)→社会奉仕国家(social service state)
・ 中間階級の優越→大衆の優越
・ 自由民主主義→大衆民主主義
・ 単一の世界経済→単一の国民経済
・ 経済ナショナリズムと国家の社会化の結合……大規模な移民入国に対する国境封鎖
・ 賃金安定の魅力→これまで対立の構図にあった雇用者と労働者が,産業の保護と補助金という政策的立場で一致→国家政策と社会政策の結合
・ 国家の数の増加
・ 第一次世界大戦の民族自決主義……分離への永続的誘惑
・ 特権的地位を持った国(privileged state)の行動が,非特権諸国に工業生産物(の利益)への欲求と民族意識の発展を作り出した
・ リストの保護関税主義→中小国で取り上げられ,経済ナショナリズムへ
The Crimax (第一次世界大戦頃から,原著26ページ〜34ページ)
【キーワード】 社会化された国家(socialized nation),全体主義(totalitarianism),全体戦争(total war),経済的利益の確保(securing economic advantages)国民に対する義務(obligation to nation's own people),国際法・国際条約の無意味性(irrelevancy of international law and treary),個人に対する国家の優位(nation over individual)
・ 1914年の世界戦争の性質……ナショナリズムと社会主義の連結(join hands)→全体主義的措置
・ 戦争は政府および軍隊に対する事件と見る戦争観は崩壊し,軍人と非戦闘員を区別することはなくなった
・ 民衆の民族的憎悪が政策の手段として意識的に煽動された
・ 国家の社会化→経済体制に優越しての政治的権威の再建(→相互的に国家の社会化に影響),二度の世界大戦を引き起こした情勢の助長
・ 1914年の世界戦争による直接の革命的結果……あらゆる交戦国政府が自国通貨を発行・管理する権利を握った
・ 私有財産と企業利益が尊重されなくなった
・ 社会化された国家の間の戦争は,戦勝国の経済的利益を確保し,敗戦国の経済的無力化のための手段となった
・ 国家と国民,国家と国家の関係の変容
・ 国家は国民の生活水準と雇用と快楽の管理者(custodian)としての役割を果たすようになり,国家間の相互協定に達する能力は不足する
・ 重要な国際義務の遂行は,その政府を任命する国民の意思にかかっている
・ 近代国民政府にとって,他のあらゆる義務を差し置く,第一の義務は国民に対する義務である
・ 近代各国政府は,国際条約や国際法の規定がその国の福祉や安全に対して負担となり危険となる時は,これを守ることができないし,守るものではない
・ 君主時代(the age of sovereigns)にできた国際法は,社会化された国家とは両立しない→国際条約と国際法を基礎としては,諸国家の国際社会を創り出すことができなかったことは,西欧におけるナショナリズムの最終的破産(the final bankruptcy of nationalism)を表している
・ ナショナリズムが不慣れな(new and unfamiliar)土地に移植される→永らくヨーロッパでナショナリズムを抑制してきた非論理的禁止的要因(illogical inhabitions)が知られていない国(アジアなど)に広がる→国際法の無意味化,無力化
・ ヨーロッパにおける原住民の全面的移送を伴った領土併合→個人に対する国家の優位,ナショナリズムの偶像に対する人間の大量犠牲の最も明示的な実例
The Fourth Period ? (第二次世界大戦以降,原著34ページ〜37ページ)
【キーワード】 ナショナリズムの凋落(decline of nationalism),多民族的(multi-national)
・ 第二次世界大戦そのものの特徴が,前の時期の再現のないナショナリズムからの逆行を示している
・ 第二次世界大戦では,国民的士気・熱意(national exaltation or enthusiasm)が発揚されていない(第一次世界大戦との比較)
・ 政治戦争(ヒトラー・対独協力)の成功→国民的連体に裂け目(rifts in national solidarity)を見出したためであり,また,その裂け目を広げ深くする作用もある
・ 勝利を得た主勢力が(古い意味では)民族主義的でなくなっている→民族的でない名称(non-national
names)と多民族的性格(multi-national status)
アメリカ合衆国……諸民族のるつぼ
ソヴィエト連邦……民族問題は,全ソヴィエトに対する強い忠誠に包括された
・ 第二次世界大戦……古い分裂繁殖的ナショナリズム(old fissiparous nationalism)の,そして究極的政治経済単位(ultimate political and economic unit)としての小民族(small nation)イデオロギーの,最後の勝利
参考
●E・H・カー/大窪愿二訳,1952,『ナショナリズムの発展』,みすず書房