REPORT05


1999年度夏学期(2年次)
教育心理1
あなたの理想の学校の案内書(パンフレット形式)

都立○○○総合学校ごあんない(共通部・普通部・専門部)

設立に際しての挨拶

 本校は,小学校から高等学校までを再編し設立された総合学校であります。もちろん,形式上の再編が行われただけではありません。当学校は豊かな自然を生かし,子どもたちの社会で生きる力を育むことを第一目標にしております。

 当学校は親御様の印象にある学校とは大幅に異なります。このごあんないが皆様の当学校に対する理解の一助となれば幸いです。

総合学校とは

 本校は総合学校です。全部で12段階の生徒が,年齢に関わりなく社会の中で学んでいます。総合学校とは,一般に言われる小学校・中学校・高等学校の普通科が統合された学校です。ただ形式的に統合されたばかりではなく,今までの学年の枠を取り払った教育を行う学校なのです。

 また,総合学校の共通部9段階を終了すると,専門知識を主に習得するための3段階の専門部,あるいは高等教育に向けての全般的な教育を受けられる3段階の普通部に進学することができます。もちろん共通部9段階を終えたのち卒業することもできます。

本校の教育方針・設立理念

 これまでは学校というと,学校内だけで通用する文化,暗黙のルールなどが多く存在し,社会や日常とは極めて隔離された空間となっていました。しかし,この日常との隔離が子どもの学ぶ意欲を阻害し,また萎縮させる大きな原因ではないでしょうか。学ぶ意欲は何も学校という空間においてのみ発揮されるわけではありません。むしろ,普段の生活が行われる日常空間の方が発揮されているのです。また,そこでは学ぶ意欲に限らず,様々な意欲が働いています。学校における学ぶ意欲は日常空間における意欲と深い関係があるのです。学校が日常と分断されているからこそ,本来子どもが持っており,日常生活の中では存分に発揮されている意欲が,学校の中ではほとんど発揮されない,そして発揮できないのです。

 また,現在問題となっている,社会で生活できない人間を生み出す要因であると私たちは考えました。社会で生きていくためには,同年代に限らない様々な人との関係を構築することや,知識だけではない,分析・統合・判断の力が必要となります。また,これまでの「教科学習」の枠を越えた知識も必要となります。

 本校は,「学校は教育機関でありながらも社会の一員であり,学校が社会から隔離された特殊な空間であってはならない。そして,学校は社会で生きていくための準備をする場所である」という考えの下で設立されました。その理念を実現するために,

(1)子どもが社会の一員として行動できる教育
(2)子どもが社会の中で生きてゆける力をつけるような教育
(3)子どもが自分で行動できる力をつける教育

の3点を目標として掲げ,これを達成するためのカリキュラムや授業形式を考案し,採用しています。もちろん,これまでも行われてきたいわゆる「教科学習」の必要性も認め,これも行っています。

本校での教育

1 時間割上の教科

 本校では教科を次の4種類に分けています。

(1)基礎教科……概念的な分野を扱います。科目には,言葉,情報があります。
(2)基礎教科第二……観察的な分野を扱います。科目には,自然,社会があります。
(3)自由教科……基礎教科,基礎教科第二以外の社会で生きるのに必要な分野を扱います。科目のカテゴリーには,生活(食,健康,運動。安全,など),文化(芸術,創作,演劇など),探求があります。
(4)自習教科……上記(1)(2)(3)の自主的活動にあてられる時間のことです。この中には一人での学習,教師との学習,同段階の友人との学習,上または下の段階の人との学習(教えたり教わったり)が含まれます。

 学習の中心は(3)(4)となります。特に(4)では,年齢の離れている人に教えてもらったり,教えたりといった学習や,町に出たり,図書館に行ったり,大人の人に聞いたりして社会の中で学習することができます。

2 授業形式

 (1)(2)は,集団講義形式で行います。ただし,後で述べますがこの学校には学級がありませんから,学級単位でまとまって授業を受けるということはありません。教科書中心には授業は進めません。発展的な内容は(4)の自習教科に任せ,これらの教科では日常生活との関連を重視した基礎的な内容を授業の中心に据えていきます。特に(2)では,実際に社会に出たり,学ぶ対象に触れたりすることによってより実生活に密着した内容を学ぶことを目指します。小テストなどを通じて子どもの理解を確認しながら授業を進めていきます。(3)は内容の性質を考えて集団で行う場合もあれば,個人で行う場合もあります。この教科は(1)(2)とは異なり,段階横断的な授業が展開されます。1段階別に授業を行うわけではなく,数段階をまとめて授業を行うためです。rは多種多様な学習の方法があります。自習用の部屋に行けば,(1)(2)(3)の自習に必要な用具は揃えてあるので,子どもは自分で必要な用具を選択して学習することができます。また,(1)(2)(3)の自習のみではなく,自ら課題を設定して行う探求活動も行います。一人でも構いませんし,数人のグループで行うことも構いません。常駐する先生にアドヴァイスを求めることもできますし,TA制を採用しているので,比較的上の段階に属する子どもがTAとなって下の段階に属する子どもにアドヴァイスを行うこともあります。(4)の学習は学校校舎で行う必要はありません。町に出たり,公園で行うことも可能です。

 このように,同質集団が固まって閉鎖的なコミュニティーを極力作らないように工夫しています。

3 校舎と生活

 本校は,集中的な敷地を持たないことも特徴です。校舎やグラウンドはそんなには離れていませんが,いくつにも分かれており,子どもは授業を受けるために,町の中に出て移動することが必要です。チャイムもないため,子どもは時計を見て行動することも必要となります。校舎はコンクリート教室ばかりではありません。床で作業ができる畳敷きの校舎もあれば,会議室形式の校舎もあるといった具合に,そこで行われる活動に最も適した作りになっています。これも,校舎を分散化し,ホームルームをなくしたことによって可能になりました。

 通常の学校には存在する,図書館や一斉給食などはこの学校にはありません。図書館は町の施設を利用し,食事は子どもが食事をとる専用の建物を使用します。もちろん家に帰って食事をとることも可能ですし,町の商店で買って食事することも可能です。保健室だけは各校舎に設けてあります。

 制服はありません。時と場合に応じた服装をすることが子どもには求められます。

 このように,本校では子どもがなるべく社会生活に近い学校生活を送れるように努めています。

4 段階制カリキュラムと時間割

 本校には学年がありません。科目別に12段階制を採っていますが,1段階が1年を表しているわけではなく,1年のうちいつ段階が上がっても構いません。その段階が達成できたとみなされれば(ペーパー小テストの成績や,授業中の態度などによる),次の段階に進めるのです。ですから,学級は構成できません。

 時間割ですが,午前中は,q基礎教科とw基礎教科第二の学習にあてられます。様々な段階・様々な科目の授業が行われているので,自分がどの授業を採るのかを予め担当教師と相談して決めておく必要があります。また。午前中の空き時間や午後はe自由学習とr自習学習となります。これも,友達や探求仲間の都合などを自ら勘案して,時間割を決めることが必要です。ただし,満遍なく教科を勉強してもらうことも必要なので,子ども一人一人の時間割や学習状況は担当教師がチェックし,保管しておきます。

 午前中は原則50分が2コマ,午後は50分が4コマ時間無制限(午後5時程度まで)です。もちろん探求活動などの場合は,午後の4コマすべてを使っても構いません。

5 評価

 通知票は設けますが,かつてのように数字による相対評価は行いません。各教科の内容を理解したかどうか,自主的に取り組めたかどうかなどを文章で,本人と保護者の両方に通知します。

 今まで書いてきた授業の形式だと,どうしても子ども一人一人に教師の目が届くのか,といった問題も生まれてきます。一人の子どもを総合的に把握している人間がいないという状況も生まれかねません。それを防ぐために,本校では子どもを総合的に把握する担当教師を置いています。各教科の担当教師は,子どもの状況や他の教師に伝えたいことをカードに書き(現在はコンピュータ化されており,どの校舎でもある生徒のカードを見ることができます),教師間のコミニュケーションをとっています。担当教師は随時他の教師とも連絡を取り,また,本人とも連絡を取ることによってアドヴァイスを行ったり,一人一人の子どもを把握していきます。

学校行事

 これまでの学校行事はあくまで学校内部の行事であり,社会との接点があまりなかったのが特徴でした。しかし,本校では学校行事は,学校が社会とより密接に繋がりあうことのできる絶好の機会と考え。極力行事は社会に開かれた形で,また,社会に参加する形で行っています。

 例えば,防災訓練は学校単位では行わずに,町全体の防災訓練として行います。文化祭における模擬店は町の商店にアドヴァイスを求めたりします。遠足や運動会などは,社会に開くことがなかなか難しいため,いくつか,あるいはすべての段階の子どもを交ぜたグループ単位で行ったりします。

さいごに

 冒頭にも述べましたように,この学校はできるだけ学校を閉鎖された空間ではなく,社会に開かれた空間であることと,子どもが社会の中で生きられるような教育を行うことを目標に努力しています。しかし,学校が社会の一部となるということは,逆に考えれば,社会は学校を一つの要素として抱えたということなのです。これからは,社会も学校に対して何らかの働きかけをしなければなりません。保護者の方やその他の社会に生きる皆さんは,「子どもを学校に任せる」という消極的な態度をとることをぜひ慎んでいただきたい。最後に,これからは,社会も学校に参加する時代であるということをご理解いただきたいと思います。