REPORT11
2000年度夏学期(3年次)
メディア分析演習2
放送ディジタル化の光と影
[光]放送のディジタル化技術そのものは,画質・音質の向上や,チャンネル数の増加に伴う視聴者の選択の幅の拡大を生むといえる。また,送出可能な情報量が増えるため,画像・音声情報に付加する形で様々な情報をデータ放送として送出することができる。さらに,情報の流れが送出者から視聴者への片方向のものではなく,視聴者から送出者への双方向のものになることも大きな変化である。
このことは,視聴者側にとっては,放送を見ている時間がより充実するという点でプラスである。これまでは,番組のみでは不十分だった情報を,電話やウェブ,雑誌などの他のメディアから取り出すことが必要であったが,番組に関連する情報をデータ放送でテレビに送出すれば,視聴者側はテレビだけで必要な情報が取り出せるからである。また,これまでは番組の中に詰め込んでいた情報(地図や電話番号など)を,データ放送に乗せることで,視聴者が「情報の洪水」に巻き込まれるのを防ぐことができる。さらには,チャンネル数の増加によって,ある専門的な内容に特化したチャンネルの出現が期待でき,視聴者の深い要求に応えることのできるメディアになる可能性も高い。また,放送の中で大きな位置を占めるコマーシャリズムの観点からも,購買欲を刺激する新たな表現技法を用いることができ,また,視聴者からのコマーシャルに対する反応を直接受けることができる。
[影]しかしながら,放送がディジタル化しても,番組そのもののコンテンツが変化しなければ,放送ディジタル化は「放送革命」とはならない。ディジタル化やデータ放送の開始は,新たな表現技法を制作者に与えるが,その番組の本質的なコンテンツを変える力までは持っていない。表現技法に適したコンテンツを考えていくことが必要になろう。また,情報の流れが双方向のものになるといっても,視聴者から送出者へ送られるであろう情報は,あくまでも,送出者が用意した枠内(選択肢,分野など)での情報であり,完全な双方向性を持つとは言えない。やはり送出者が優位に立っており,視聴者の「積極的」な参加とは言えないように思われる。さらに,すでにインターネットの分野では問題となっている,視聴者が情報を送出する際の個人情報の管理の問題も検討してゆく必要がある。回線がテレビと繋がるということは,視聴者が知らない間に,視聴者に関する情報を送出者が得ることも可能なのである。
いずれにせよ,まだディジタル放送は準備段階であり,特にデータ放送が成功するかどうかは不明である。日本人のテレビを見る姿勢を変えるのにどれだけの年月が必要なのか,また,データ放送の費用対効果は実際どれくらいになるのか,未知数も多い。