
はじめに。
韓国留学日記というタイトルのこのコーナー,当然,内容は韓国留学中の日記,そして韓国留学に向けての日記です。しかしながら,何の説明もなくいきなり日記が始まるのもなんなので,「なぜ僕が留学することになったのか」「しかもなぜ韓国なのか」ということについて少しは触れることにします。
東大教養学部の交換留学制度を悪用(?)したんです。
僕が通っている東京大学の教養学部には「AIKOM(Abroad In KOMaba)」という制度があります。駒場という名前が入っているのは,東大の教養学部が目黒区の駒場にあるからです(東大は教養学部だけは駒場にあるのです,赤門で有名な東大とは場所が違います)。この制度を利用すると海外の提携を結んでいる大学(フランスやアメリカやオーストラリアなどかなりいろんな国)に1年間交換留学に行けてしまうんです。さらに留学先で取得した単位も卒業単位として認定され,留年をしないで卒業することもできるという特典つき。まぁ,卒業論文を書いたり,就職活動をしないといけないので留年をしない人はほとんどいないですけどね。留学定員はかなり多めで,留学する権利を持っている学生の十分の一程度。もちろん大学内での専攻や語学能力(TOEFLとかですね)の制限とかはあるんですが……。最近では,交換留学制度があるから,という理由で教養学部に進学する輩もいるとかいないとか。
この制度の中でソウル大学とも提携を結んでいて,毎年1〜2人が留学に行っています。ソウル大学の場合,例年ならば国際関係で韓国政治を専攻しているだとか,地域研究で韓国が専門だとかという人が留学するんですが,なぜ,韓国とはあまり関係のないメディア論・サイバー空間論を専門にする僕が韓国に留学することになったかというと……。
理由1 大学で朝鮮語と出会う。
まず,第二外国語として朝鮮語を選択したという要因が大きいですね。東大では理系文系問わず,入学後2年間は「第二外国語」を履修しなければなりません。英語が第一外国語の場合,第二外国語として用意されている選択肢はフランス語・ドイツ語・ロシア語・中国語・スペイン語・朝鮮語(これは文系だけに用意されていました……今は知りませんが)です。ご想像の通り,普通の人は,仏語・独語・中国語を選択します。特に仏語クラスは女子割合が多いとのことで,男子の人気が高かったりします(噂)。中国語は,国交正常化以降,履修人数がウナギのぼりで,最近もますます人気が高くなってきています。露語は昔の名残ですかねぇ,とはいいつつ文学の分野ではまだまだ健在ですし,理系でも宇宙論の分野では完全に廃れているとは言えず,辛うじて生き残っています。比較的新顔の西語もそこそこ人気があります。
さて,肝心の朝鮮語ですが,じつは開講されたのはたった5年前という超新顔。選択者も20〜30名程度(全入学者2500人中)!というマイナー語学です。第三外国語で選択する人は多いんですが,第二外国語で選択する人は,韓国ブームが騒がれる今でもあまり増えません。まぁ,学問をやる上での実用性と,大学院入試のことを考えると,その気持ちも分かるんですけどね(ちなみに,英語と朝鮮語しかできないという段階で受験できない大学院たくさんあります)。
ではなぜ朝鮮語を選択したかというと,(1)アルファベット言語に嫌気がさしてきた,(2)持ち前のアマノジャク的性格(マイナー道を選好する)が発揮されて他の人があまりやらないだろうという朝鮮語に惹かれた,(3)隣の国だし,というのが主な理由(きっかけ)です。
確かに,文字覚えるの大変だし,発音も簡単じゃないですけど,文法は日本語に近いし,文字面白いし,みなさん,朝鮮語はいいですよ(笑)。やっているうちにわかります。仏語・独語・中国語を「なんとなく選んだ」輩とは違って,けっこうみんなモチベーション高いし。そんなに語学が得意じゃない僕でも続けられる。しかも! 東大の朝鮮語講師陣は蒼々たるメンバーがそろっているんです。他のどんな語学よりもすごいんじゃないですか。
教えてくれた先生たち。
生越直樹(おごし・なおき)助教授:東大教養学部では唯一の朝鮮語を専門とする先生。所属上は「中国語・朝鮮語分科」だが,実際問題としては中国語の先生に囲まれて肩身の狭い思いをしているらしい。何年かに一度NHKのラジオ講座の講師をしている(結構おいしい仕事らしいです)。
金東漢(きむ・どんはん)先生:最初は知らなかったのだが,実は2つ隣の駅に住んでいる。NHKのお昼の朝鮮語ニュースのアナウンサーとして活躍する他,ラジオ講座で講師を務めたりしている。こわそうだと見た目でビビる人もいるが,決してそんなことはない。
張銀英(ちゃん・うにょん)先生:金東漢先生の奥さん。当然,2つ隣の駅に住んでいる。夫と一緒にNHKのお昼の朝鮮語ニュースのアナウンサーとして活躍している。日本語は夫よりもうまい(東漢先生は日本語専攻でなかったのでいたしかたないが)。夫婦揃って単語集や問題集を出版してたりする。
☆喜☆(ちょ・ひちょる)先生:日本にはない漢字を名前に使っているので,すいません,表示できません。1文字目は,「曹」のたてぼうが1本少ない字です。3文字目は,組み合わせで無理矢理表示させると「シ育攵」です。言語学者。見た目は典型的な韓国人。日韓辞典を一人で編纂するという偉業(日本でも売ってます)を成し遂げる反面,ミーハーだったりする。
根本理恵(ねもと・りえ)先生:翻訳者。韓国映画の字幕を中心にご活躍なさっている(韓国映画のかなりの部分は彼女が字幕を付けている……シュリとかカルとか)。日本に韓国の俳優が来たときは通訳もこなしている。ちょっと天然が入ったキャラにファン多数。
木宮正史(きみや・ただし)助教授:専門は韓国政治。言語学が専門ではないのだが,朝鮮語講読の授業を担当なさっている。AIKOMの面接の時,面接官として難しい質問を飛ばしてくれた(今でも忘れない)。いや,決して嫌いなわけではありません。
理由2 韓国が好きになる。
そして,朝鮮語を選択した人の特徴として,韓国が好きな人が多い,または韓国が好きになるというのがあります。フランス語を選択した人のフランス好きレベルや,中国語を選択した人の中国好きレベルに比べたら,朝鮮語を選択した人の韓国好きレベルはかなり高い気がします。下のクラスには,彼女が韓国人(韓国在住)という人もいたりなんかします。最近は韓国がちょっとしたブームですが(飛行機のチケット取りにくくて困っています),朝鮮語クラスの友人の多くは,韓国料理も映画も音楽も好きです。僕もご多分に漏れていませんが。
理由3 教養学部に進学する。
文科二類に入学したので,そのままいけば経済学部に進学する予定だったのですが,数学が苦手だったのと(論文だけで東大に入学しているので),経済に対する熱意を失いかけていたことがあいまって,進学振り分けで苦戦しながらも何とか教養学部に進学。入学時は経済学やる気まんまんだったのですが……。教養学部進学も,韓国留学の一つのきっかけでした。